うつや適応障害からの復職準備ガイド|自宅でできる7つのステップ【専門家が解説】
はじめに|「復職できるのか不安」なあなたへ
うつ症状や適応障害で休職していると、
- いつ頃、復職の話を始めればいいのか
- 何を準備すれば「復職できる状態」と言えるのか
- このまま休み続けて大丈夫なのか
といった不安が、頭の中をぐるぐる回りやすくなります。
ネットで調べても、
「早く復職した方がいい」
「しっかり休まないと再発する」
などと、正反対の情報が並び、余計に迷ってしまう方も少なくありません。
この記事では、精神科医療・リワーク支援の現場で長年、うつや適応障害からの復職を見てきた専門家の立場から、
- うつや適応障害の復職準備で大切な考え方
- 自宅でできる現実的な準備のステップ
- 準備不足でつまずきやすいポイント
を、できるだけ整理してお伝えしますので、参考にしてくださいね。
適応障害(適応反応症)とは
適応障害は、特定の環境や出来事(職場の人間関係、業務内容、配置転換など)にうまく適応できず、抑うつ気分や不安、意欲低下、体調不良などの心身の不調が現れる状態です。
現在の診断名では、「適応反応症」と呼ばれています。
「障害」という言葉がつくため、重く受け止められがちですが、ストレスの原因となっている環境から離れることで、症状が改善・回復していくケースが多いことが特徴です。
うつ病と似た症状が現れますが、適応障害(適応反応症)の大きな特徴は、「環境とのミスマッチ」が強く影響している点にあります。
そのため、休職中に症状が落ち着いたかどうかだけでなく、「復職後に同じ、あるいは似た環境に戻ったとき、どのように対処するか」まで考えておくことが、復職準備ではとても重要になると言えます。
適応障害(適応反応症)については、厚生労働省の「こころの耳」でも、ストレスとの関係や対処の考え方が事例を紹介する形で整理されています。
なぜ、準備不足のまま復職するとつまずきやすいのか?
復職の相談を受けていると、
「症状はだいぶ落ち着いてきました」
「家では問題なく過ごせています」
と話される方は少なくありません。
中には、「休職中なので、今は特にストレスは感じていません」
とおっしゃる方もいます。
仕事という大きなストレス要因から離れているため、心身が落ち着いている状態であること自体は、自然なことですよね。でも、実際に復職してみると、
- 思った以上に疲れが出る
- 周囲の視線や評価が気になる
- 以前と同じように頑張ろうとしてしまう
といったことで、再び調子を崩してしまうことがあるので注意が必要です。
これは、ご本人の意志の弱さや努力不足が原因ではありません。
多くの場合、復職準備が「症状が軽くなったかどうか」の確認で止まってしまっていることが影響しています。
休職中の生活と、復職後の生活とでは、求められるエネルギーや負荷の質が大きく異なります。
職場だと、
- 勤務時間に縛られる
- 人間関係のストレスが増える
- 評価や責任というプレッシャーが加わる
などのストレスにさらされることになってしまいます。
こうした変化に対する備えがないまま復職すると無理を重ね、結果的に心身のバランスを崩しやすくなるので、休職中から復職準備を進める必要があると言えます。休職前と同じようなストレスにさらされても、うつや適応障害の症状を悪化させることなく、働き続けるための準備をすることが大切です。
自宅で復職準備を進めるときに必要な3つの視点
復職準備というと、
「体調が良くなったかどうか」
「通勤できそうか」
といった点に意識が向きがちです。
もちろんそれも大切ですが、それだけでは復職後の生活を支えるには不十分なことが少なくありません。ここでは、私のこれまでの支援経験をもとに、押さえておきたい復職準備の3つの視点を整理します。
①心の準備|考え方や受け止め方を整える
うつや適応障害のある方は、もともと
- 責任感が強い
- 周囲に気を遣いすぎてしまう
- 「ちゃんとしなければ」と自分を追い込みやすい
といった傾向を持っていることが多くあります。
休職中はこれらの特徴が表に出にくく、「もう大丈夫かもしれない」と感じやすいのですが、復職するとこれらの考え方にとらわれて、しんどくなってしまうかもしれません。
そこで、以下のような考え方ができるようになると、良いのではないでしょうか。
- 「疲れたら休んでいい」と思えるようになった
- 完璧主義をほどほどに、100点を目指さずに働けそう
- 仕事がうまくいかないときに、自分を責めすぎず、バランスの良い考えができるようになった
自分を責めすぎず、ちょうど良いバランスの考え方ができるようになることが、復職準備につながります。このような考え方ができるように、認知行動療法などを学んでおくのがおすすめです。
②生活リズムの準備|働く生活に戻る土台づくり
復職すると、休職中のような自分のペースで過ごすことは難しくなりますので、疲れを感じてもすぐにその場で休むのは難しいですよね。
復職の準備としての生活リズムについては、以下のポイントを参考にしてみましょう。
- 起床・就寝時間が大きく崩れていないか
- 復職後を想定して、決まった時間帯に活動する練習ができているか
- 週5日を想定した生活リズムを、無理のない範囲で試せているか
完璧な生活リズムを作る必要はありませんが、回復してきているにもかかわらず、「何もすることがないから」という理由でベッドで横になって過ごすのはおすすめできません。日中は家事などの活動に取り組み、適度に体を動かすようにしましょう。
大切なのは、「働く前提の1日」を体験しておくことです。
できれば、毎日図書館に通う、一通りの家事をこなす、など、活動的に過ごせると良いですね。
朝起きて夜寝るまでのリズムを整えておくことが、ストレスや生活リズムの乱れが心身に与える影響については、厚生労働省のe-ヘルスネットに掲載されていますので、ご参照ください。
③環境への備え|同じ状況に戻ったときの対処を考える
うつや適応障害のある方の復職準備で、特に重要なのが、休職前と同じようなストレスにさらされたときの対処法が身についてるか、ということです。
- 苦手な業務を担当しないといけなくなったらどうするか
- 人間関係でストレスを感じたとき、どう距離を取るか
- ストレスサインに、どう気づき、どう対応するか
こうしたことを復職前に整理しておけるかどうかで、復職後の安定感は大きく変わります。
休職になった要因を振り返り、どう対処すればストレスを受け流すことができるのか。一人で振り返るのはつらい作業になるかもしれませんが、これらのことを言葉にしておくことが、復職後に役立ちます。
できれば、レポートとして言語化し、まとめておくことがおすすめです。
うつや適応障害を経験される方には、
真面目で、責任感が強く、周囲のことをよく考える人が多いな、と私は感じています。
このような方は本来、会社にとって、とても貴重な存在です。
さらに、つらい時期を経験したことで、
・人のしんどさに気づけるようになった
・無理をしているサインに敏感になった
という変化が生まれる方も多くいます。
こうした気づきや感覚は、
職場で働き続けるうえで、大切にされる力の一つでもあります。
これまでの経験を否定せず、自分の良さをそのままに、
自信をもって復職してほしいなと思います。
リワークに通えない場合でもできる復職準備|7つのステップ
ここからは、うつや適応障害で休職中の方が、自宅で無理なく取り組める復職準備を、7つのステップに分けて紹介します。
ステップ1|主治医と「復職」の話題を共有する
復職準備は、「体調が良くなってから考えるもの」と思われがちですが、主治医の先生とは、少しずつ話題にしていくことが大切です。
もしかすると、「まだ調子が回復していないのに、復職のことを話すとどう思われるか」と心配になるかもしれません。ただ、私がクライエントの方とお話しする時は、自分の休職満了日を主治医の先生に早めに伝えておくことを勧めています。休職期間の上限は会社によって異なるため、この情報を共有しておかないと、復職のタイミングについて現実的な相談がしにくくなってしまうことがあるからです
- いつ頃の復職を想定しているか
- どんな働き方に不安を感じているか
- 段階的な復職が可能か
などです。主治医の先生に「自分は復職をどう考えているのか」を共有しておくことができると、復職の時期や必要な準備について、より現実的な相談がしやすくなります。
ステップ2|生活記録をつける(体調の波に気づく)
休職中の過ごし方を記録することは、規則正しい生活ができているかの確認だけでなく、自分のストレスサインをとらえることや、ストレスを引き起こすストレッサーが何なのかを把握することにもつながります。
まずは、
- 起きた時間と寝た時間
- 外出先や活動内容
- 疲れやすかった場面
を、短いメモ程度でも構わないので記録してみましょう。
特に意識してほしいのが、「疲れやすかった場面」を具体的に残すことです。
- どんな活動をしたのか
- 誰と会ったのか、どんなやり取りがあったのか
- その後、体や気分にどんな反応が出たのか
簡単なメモで良いので、記録をしておくことで、自分にとってストレスになりやすい行動パターンや対人パターンが見えてきます。生活記録は、「できていない自分を評価するため」のものではないので、思っていたような生活ができない日があっても大丈夫です。
生活記録をながめることで、自分のストレスパターンが把握でき、復職後の働き方や人との関わり方を考えるうえで、とても大切な手がかりになります。
ステップ3|考え方のクセに気づく(認知行動療法の体験)
復職を意識し始めると、つい、次のような考えが浮かんでしまうことも…。
- ちゃんとできなければ仕事に戻る意味がない
- 周りに迷惑をかけてはいけない
- 以前と同じように働けなければならない
こうした考えは、「真面目さ」や「責任感」の表れでもあり、決して悪いものではありません。ただ、復職後に忙しく働くようになると、これらの考え方が自分を追い込みすぎる方向に働くことになってしまうかも。
うつに有効だと言われている認知行動療法(CBT)では、このように自動的に浮かぶ考え方を「自動思考(考え)」として捉え、事実や状況と区別して整理していきます。
もちろん、考え方を無理に変えようとする必要はありません。
まずは、どんな場面で、どんな考えが浮かびやすいか、その考えが出たとき、気分や行動がどう変わるか、ということに気づけるようになることが大切です。
たとえば、
「疲れているのに、休んではいけないと思ってしまう」
「少しミスをすると、全部ダメだと感じてしまう」
といった自分の反応に気づくだけでも、考え方を見直すきっかけになります。
復職後に同じ状況に戻ったとき、自分の考え方に振り回されすぎずに働くための準備として、認知行動療法(CBT)の視点を取り入れていくことは、とても大切なことだと言えます。
ステップ4|自分なりのストレスサインを知る
復職後につまずきやすい理由の一つに、「無理をしていることに気づくのが遅れてしまう」という点があります。
休職中は、仕事による負荷がないため、多少の疲れや違和感があっても、自然に回復できていることが多いので、自分のストレスサインといっても、どんなものなのかイメージしにくいかもしれません。
ストレスサインは、人によってさまざまです。
たとえば、
- 寝つきが悪くなる、夜中に目が覚めやすくなる
- 食欲が落ちる、または過食気味になる
- 些細なことでイライラしたり、落ち込みやすくなる
- 人と話すのが億劫に感じる
といった変化です。体の変化、こころの変化、行動の変化の3つの項目で考えると良いですね。
ステップ2でつけていた生活記録は、このストレスサインを見つけるための大切なヒントになります。
- どんな活動をした後に疲れが出やすいか
- 誰と会った後に気分が落ちやすいか
- ストレスがかかると、体や気持ち、行動にどんな反応が出たか
こうした傾向が見えてくると、「調子が崩れ始める一歩手前のサイン」に気づきやすくなります。
大切なのは、サインが出ないように完璧にコントロールすることではなくて、「あ、これは自分のストレスサインかもしれない」と気づき、
- 休む
- ペースを落とす
- 誰かに相談する
といった対応を早めに取れることが、復職後の安定につながります。
ここまで読んでくださった方の中には、
「復職したい気持ちはあるけれど、また同じことを繰り返すのが怖い」
「通所型のリワークに通いたいけど時間がない」
そんな不安を抱えている方もいるかもしれません。
次のステップでは、復職前に取り入れやすい「自宅でできる復職準備」について整理します。
ステップ5|自宅で「復職準備」を取り入れる
復職準備で大切なのは、仕事の再現ではなく、「働く前提の過ごし方」に体を慣らしていくことです。
ここでいう「働く練習」は、無理をすることでも、我慢を重ねることでもありません。
たとえば、
- 決まった時間に作業を始めてみる
- 30分〜1時間程度、集中する時間をつくる
- 疲れを感じたら、その時点で休むところまで含めて試す
といった形で、「活動する → 疲れに気づく → 休む」という一連の流れを体験しておくことが目的です。
重要なのは、どれくらいできたかではなく、どのくらいで疲れが出るのか、どんなストレス対処法が有効かを知ることです。
うまくできなかった日があっても、それは失敗ではありません。その日の体調や負荷の目安が分かった、という大切な情報です。
また、この段階では、毎日必ず続ける必要はありませんし、同じ内容を毎日継続しないといけない、というわけでもありません。予定していたことができない日があっても問題ないのですが、その時は、「予定していたことができない日」のやり過ごし方を、意識できるとなお良いですね。
休職中にストレスに感じたことは、どれもストレス対処の練習素材だと考えるようにしてくださいね。
ステップ6|復職面談を想定し、話すことを整理する
復職準備の中で、多くの方が強い不安を感じやすいのが、職場とのやり取りです。
特に、復職が近づいてくると、「復職面談で何を話そうか」「上司や人事担当者と顔を合わせるのが負担」と悩む方は少なくありません。
復職面談とは、休職から復帰する前後に、本人と会社(産業医や上司・人事担当者など)が働き方や配慮事項を確認するために行う面談のことを指します。※会社によって呼び方や進め方は異なります。
復職面談では、今の状況を尋ねられたり、休職中に取り組んだことを問われたりすることが多くあります。また、復職後の働き方についても、復職面談で話し合うことがよくあります。
「面談のことを考えるだけで気が重くなる」と感じ、復職の話題そのものを避けてしまう方もおられますが、やはり復職面談は避けて通れないため、あらかじめ準備をしておきたいですね。
面談で話すことを、紙に書き出したり、言葉にして整理してみることで、不安な気持ちはかるくなります。主治医、産業医、人事担当者、第三者の支援者など、誰に何を相談するかを整理しておくことも、復職面談や職場とのやり取りを考えるうえでの大切な準備になります。
ステップ7|復職後を見据えて、気持ちにゆとりをもたせる
復職準備というと、「復職前に働いていた頃と同じペースまで戻さなければならない」
と考えてしまう方もいます。
ですが、休職前と同じ働き方ができるかどうかは、実際に復職してみて初めて分かる部分も多くあります。復職前にできるのは、復職後に困らないための備えをしておくことです。
たとえば、
・疲れが強い日が続いたら、誰に相談するか
・業務量やペースが合わないと感じたとき、どう伝えるか
・「無理をしているかもしれない」と感じたら、どこで立ち止まるか
こうしたことを、復職前に少し考えておくだけでも、復職後の不安や緊張がやわらいで、少し気持ちにゆとりがもてるのではないでしょうか。
「もう少しできそうだけど、今日はここまでにする」
「頑張れそうな日でも、あえてペースを上げすぎない」
こうした感覚を大切にしておくことは、復職後に無理を重ねないための、重要な練習になります。
まとめ|
適応障害で休職していると、
「早く戻らなければいけないのでは」
「このまま休んでいて大丈夫なのだろうか」
と、気持ちが揺れ続けることは珍しくありません。
復職準備という言葉から、
「元どおりに働ける状態を作ること」
を想像する方も多いですが、実際には、それだけが復職準備ではありません。
この記事でお伝えしてきたのは、復職前に無理をして仕上げることではなく、
- 自分の考え方の傾向に気づくこと
- 働く生活に向けた土台を、無理のない形で整えること
- 復職後にストレスにさらされたときのの対処を、あらかじめ備えておくこと
こうした一つひとつの積み重ねが、
復職後に安定して働き続けるための支えになるという考え方です。
無理に急ぐ必要はありませんので、できるところから、少しずつ始められると良いですね。
一人で悩むときは
復職準備は、一人で考えられる部分もあれば、誰かと一緒に整理した方が楽になる部分もあります。
もし、
「今の自分の準備は、どの段階なのか」
「このまま進んで大丈夫か、一度確認したい」
と感じることがあれば、オンラインで復職準備を整理するサポートを行っていますので、気軽にお申込みください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 復職準備は、いつ頃から始めればいいですか?
日常生活が送れるようになり、外出などをしても翌日まで強い疲れが残らなくなってきた頃が、復職準備を具体的に進め始める一つの目安です。
体調が少し落ち着いてきた段階から、
・生活リズム
・考え方のクセ
・復職後の不安点と対処方法
を整理し始めておくことで、復職直前に慌てずに済むケースも多くあります。
特に、復職期限が決まっている場合は、余裕をもって準備を始めておくことで、復職後の負担を小さくしやすくなります。
Q2. リワークに通えない場合でも、復職準備はできますか?
はい、可能です。
通所型リワークに通うことが難しい方でも、自宅で生活リズムや考え方、ストレスへの対処の仕方を整理しながら、復職されているケースは多くあります。
なお、リワークが勧められる背景や目的は人によって異なります。
大切なのは、ご自身が、どんなことにストレスを感じやすかったのか。それに合った準備ができているかどうかです。
Q3. 復職後に、また調子が悪くなったらどうすればいいですか?
復職後に揺れが出ること自体は、珍しいことではありません。
大切なのは、「悪くならないように完璧に管理すること」ではなく、調子が悪くなり始めたときに、早めに気づき、対処できることです。
そのためにも、復職前に「誰に相談するか」「どう調整するか」をあらかじめ備えておくことが、復職後の安定につながります。