メンタルケアのためのアプリでも“人の支え”が復職支援には大切|うつ・適応障害に効果的な伴走型サポートとは

最近は、オンラインで受けられるメンタルヘルスサービスやメンタルケアのためのアプリも増えてきて、外に出るのが難しい時期でも支援を受けやすくなりました。

まだ人と会うのがしんどい、人間関係が疲れる、といった方には、デジタルデバイス(アプリなど)を使ったメンタルケアが、使いやすいのではないかとも思います。

そこで、興味深い研究を見つけたので、ご紹介します。

目次

最新研究が示す“人のサポート”の効果|伴走支援が復職を後押しする話

2024年に発表された国際的なメタレビュー(Linardon et al., Journal of Medical Internet Research, 2024)では、31件のメタ分析(計505件の研究)を統合し、次の結果が報告されました。

それは…
アプリなどのデジタルを使った支援も、人の関わりがある支援ほど、継続しやすく、効果も高いということです。

  • 約半数の研究で、「人のサポート付き」のデジタル支援が「人のサポートなし」のデジタル支援よりも、有意に効果的

この論文は、アプリやオンラインプログラムなどの、デジタルメンタルヘルス介入において、カウンセラーが定期的にメールやチャットで声をかけたり、進捗状況を確認して励ましたりする「人のサポート付き」のあるサービスと、ないサービスに、効果の違いがあるのかどうかを検証したものです。

人のサポートがないと、途中でアプリの利用をやめてしまう人が多いかと思うので、やはり「人のサポート付き」の方が効果があるんじゃないかな、という私の肌感覚と近い結果でした。

このことが示しているのは、デジタル支援そのものよりも、「人との関わりがあるかどうか」が継続の分かれ道になるということだと思われます。アプリでも「人とのつながり」を感じられること、それこそが、メンタルケアに役立つのだと。

ということは、
オンラインの復職支援においても、専門家の伴走サポートがあるかどうかは、継続や結果を左右するんじゃないかと、私は思います。

特に休職中は、「このまま休んでいていいのかな」「いつになったら働けるようになるんだろう」と悩みがち。メンタルヘルスの専門家から、「それでいいんですよ」という言葉が聞けると、安心して療養することができるんじゃないかと思います。

うつ・適応障害で休職中の方へ:一人で頑張る復職は難しいものです

休職からの復職は、体力や気力が少しずつ戻ってきたとしても、「本当にまた働けるのだろうか」「職場でうまくやっていけるだろうか」といった不安がつきものです。
頭ではわかっていても、心が追いつかず、焦りや孤独を感じてしまう時期もあるかもしれません。

でも、それは自然なことですよね。
私もこれまで多くの方と関わる中で、「一人抱え込んで不安が大きくなってしまう」という場面を何度も見てきました。
だからこそ、専門家が伴走しながら「安心して試せる環境」を整えることが、復職を支えるうえで欠かせないのだと思います。

オンラインでも信頼関係を築くことで、離脱しにくい復職支援を実現

私が運営しているオンライン復職支援プログラム「ゆるリワーク」では、オンラインでもお互いに顔を見ながら関わることで、安心感と信頼関係を築いています。

画面越しでも、「自分を見てくれる人がいる」という感覚が、回復へのモチベーションを支えることにつながっているんじゃないかな、と思っています。


まさに、研究で示されている「人のサポートがある支援ほど効果が高い」という結果を、日々の実践の中でも実感しています。

復職支援における伴走型サポートの意義

伴走支援の目的は「アドバイスをすること」ではなく、一緒に考えることで“自分らしさ”を取り戻してもらうことです。

復職支援では、以下のような側面を丁寧にサポートします:

  • 朝の挨拶会を活用して、生活リズムを整える
  • ストレス対処について学び、ストレスに気づく練習をする
  • 心理療法を学び、職場での人間関係への備えを進める

これらの「再発予防」を一人で行うのは大変ですが、私が伴走することで継続できて、復職に前向きな気持ちになれると良いな、と思っています。

適応障害・うつで休職しているあなたへ:オンラインでも“つながり”を感じられる支援を

休職中は、「このまま良くなるのだろうか」「職場に戻ってまた同じことが起きたらどうしよう」と、
先のことを考えるだけで不安になることがあるかもしれません。
そんなときこそ、「誰かが自分を気にかけてくれている」という実感が、心の支えになるのではないでしょうか。

オンラインの復職支援は、外出の負担が少なく、今の体調に合わせて無理なく進められるというメリットがあります。


でも本当に大切なのは、画面の向こうに“人の温度”を感じられること…。
たとえオンラインであっても、あなたの状況を理解し、必要なときに寄り添ってくれる人がいると、少しずつ前向きな気持ちが、戻ってくるものではないでしょうか。

この記事を書いた人

この記事を書いた人
辻本智美(公認心理師・作業療法士・精神保健福祉士)
精神科で20年以上勤務し、うつ病や適応障害などメンタル不調を抱える方の復職支援に携わってきました。
現在は、オンラインでのリワークプログラムやストレスケア講座を通じて、
「働く人が自分らしく回復し、安心して仕事に戻れる社会」を目指しています。

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