リワークをもっと身近に──医療系専門学校での講義を終えて感じたこと

前回に続き、医療系の専門学校で「リワーク」について講義をする機会をいただきました。前回はリワークの概要や意義についての説明でしたが、今回は架空の事例を使った演習。学生さんたちにはグループごとに分かれて、「実際にリワークで支援を行うとしたら、どんな関わり方ができるか」を話し合ってもらいました。まだ実務経験のない学生さんたちでしたが、皆さん真剣に考えてくださり、グループワークの時間は教える側の私にとっても学びが多いものでした。

講義後に担当の先生とお話ししていると、「最近は国家試験でもリワークに関する出題があるんですよ」と教えてくださいました。リワークが国家試験に出るようになったというのは、現場におけるリワークの重要性が高まっている証拠でもあります。確かに近年は、企業で働く人のストレスケアやメンタルヘルス対策が、経営者や行政にとって避けて通れない課題になっています。10月の「労働安全衛生週間」でも、「ワーク・ライフ・バランスに意識を向けて ストレスチェックで健康職場」というスローガンが掲げられており、ストレスチェックやメンタルヘルスが主要テーマとして取り上げられていました。

とはいえ、すべての職場で十分な対策ができているわけではありません。会社の規模が小さいほど、心の健康への取り組みが行き届きにくい現状があるようです(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_kekka-gaiyo01.pdf

ただ、リワークを利用した人のほうが、復職後の就業継続率が高いということは、明らかになっています。(https://utsu-rework.org/cms/wp-content/themes/the-thor-child/img/pdf/2019_006.pdf

それにも関わらず、非正規雇用の方や中小企業で働く方の場合、休職期間が短かったり、制度が十分に整っていなかったりして、リワークの支援がまだ行き届いていないのが現状です。利用できる施設そのものが限られているという現実もあります。そうした中で、今回のように医療職を目指す学生さんたちが、在学中からリワークの意義や方法を学ぶというのは、とても大きな意味があると感じました。将来、彼らが現場で働くようになったときに、メンタル不調で苦しむ人に「リワークという選択肢があるよ」と伝えられる支援者が一人でも増えることを願っています。

講義を終えたあと、学生さんたちが「リワークって初めて知りました」「こういう支援をやってみたい」と話してくれて、とても嬉しかったです。この講義が、いつか誰かの「もう一度働きたい」という気持ちを支える力につながっていくと良いなと思います。

この記事を書いた人

この記事を書いた人
辻本智美(公認心理師・作業療法士・精神保健福祉士)
精神科で20年以上勤務し、うつ病や適応障害などメンタル不調を抱える方の復職支援に携わってきました。
現在は、オンラインでのリワークプログラムやストレスケア講座を通じて、
「働く人が自分らしく回復し、安心して仕事に戻れる社会」を目指しています。

目次