うつ病や適応障害で休職していると、どのくらいの期間休むのが適切なのか、どのように過ごせばよいのか、と悩んでしまう方が多いですよね。骨折や手術をするような疾患と異なり、うつ病や適応障害では、回復のペースは人によって異なることが多いので、主治医の先生に訪ねても明確な回答が得られないのは仕方がないかもしれません。そうは言っても、どのくらい休めば仕事に戻ってよいのか、おおまかな目安がある方が、安心して休める方もおられるかと思いますので、私の臨床現場での経験をもとに、休職期間についてお伝えします。ただ、これは医学的なエビデンスに基づいたものではなく、あくまで私の経験に基づく内容です。すべての人に当てはまるわけではないことを前提にお読みくださいね。
回復するまでに必要な休職期間は?
休職してから復職するまでの期間は、人それぞれ異なります。例えば、ストレスにさらされていた期間が短くうつ症状が比較的軽い、休職をしはじめて2週間程度で回復の兆しがみられるのであれば、1か月間の休職を経て復職を検討することも可能かもしれません。ただ、長期間にわかる過労やストレスが原因で、心身ともに限界を迎えていた、という場合は、症状が落ちついたように見えても、ちょっとしたストレスで再発するリスクが高くなってしまいます。仕事だけでなくプライベートでも負担を抱えていたという場合もありますので、「仕事に戻りたいな」という気持ちが芽生えるまでは、できれば休んでいたいものですね。
このような場合、私の経験では、少なくとも2か月は休むのが望ましいと考えています。特に「復職したらまた症状がぶり返してしまうのでは」と不安を感じる場合は、もう少し長く休むことを検討するのが良いのではないでしょうか。再発をしないためには、半年くらいは休職しながら、しっかりと休息をとり、自分をしんどくさせるような考え方のクセを見直す「認知行動療法」を学んだり、自分に合った働き方をじっくり考える時間をもつのが良いと思います。会社とやりとりをしたらしんどくなって寝込んでしまう…というような場合は、まだ復職は早いと考えるべきだと思います。
休職期間中の葛藤や復職への焦り
うつ病や適応障害で休職することになると、「もう仕事に持った方が良いんじゃないか」「来月には戻らないと」と、復職を急がなければならないような気持になることがあります。特に家族や友達、職場の同僚から「そろそろ復帰できる?」と聞かれたり、会社の上司や人事担当者から復職のタイミングについて相談されたりすると、プレッシャーを感じてしまうことも。でも、焦って復職すると、しっかり回復しないまま無理をしてしまって、再び体調を崩してしまうことにつながりかねません。
復職のタイミングは、他者からの期待や意見ではなく、自分の心と体の状態に耳を傾けて決めることが大切です。少しでも「まだ不安がある」「仕事のことを考えると心が重くなる」と感じるのであれば、もう少し休職を続けることも考えましょう。できれば、復職前に短時間の勤務やリワークプログラムを活用して、ご自分の体調を確認するのも良い方法です。
休職期間の過ごし方が復職後を左右することも
休職期間中は、復職後の働き方を考えることができるという点で、とても貴重な時間になります。休職期間中に、ご自分がどのような状況でストレスを感じやすいのかを振り返ったり、ご自分の体に現れるストレスサインや考え方のクセを見つけて、復職しても再発しないような対処法を準備しておくことが重要です。クライシスプランと呼ばれる、再発予防策をまとめることもおすすめです。
休職期間は人によって異なりますが、できれば自然に「働きたい」と思えるようになるまで休みたいものです。休職期間中は焦らず、ご自分の心と体の声のセルフモニタリングをして無理のない復職を目指せると良いですね。