「待っている」と伝えられる会社が、回復を支える。休職者支援の分かれ道

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休職中、会社との関係が不安になっていませんか

休職中、会社のことが気になって仕方がない。迷惑をかけているんじゃないか、このまま戻れなくなるんじゃないか。そんな不安を抱えながら過ごしている方は、少なくありません。

一方で、企業側も悩んでいます。休職している社員にどこまで関わっていいのか、連絡することで負担をかけてしまわないか、そっとしておく方がいいのか。正解がひとつではないからこそ、現場も迷い続けています。

私自身、これまでの休職者支援の中で「基本はそっとしておく方が良い」とお伝えすることが多くありました。ただ、ある企業との関わりを通じて、その考え方だけでは支えきれないケースがあると実感したのです。

全員で迎えられた、その一日が変えたもの

その企業では、新入社員がメンタル不調で休職していました。状態はなかなか回復せず、復職支援のプログラムも何度も延期になっていました。社会人経験も浅いため、このまま復職できなくなる可能性も否定できない状況でした。

そんな中、会社がとった行動はとても印象的でした。事務手続きで来社したその社員を、社員全員で迎えたのです。笑顔で声をかけ、あたたかく迎え、一緒に写真を撮る。その様子は単なる事務的な対応ではなく、あなたを待っているという明確なメッセージでした。

後日、その社員はこう話してくれました。会社がすごくあたたかくて安心した、ちゃんと治して戻りたいと思った、と。

「戻れるか」より「戻っていいのか」で悩んでいる

この変化は、休職中の方の気持ちを考える上でとても重要な示唆を含んでいます。

休職している人の多くが悩んでいるのは、体や心が回復するかどうかだけではありません。回復してきたとしても、職場に戻っていいのだろうか、迷惑をかけた自分が戻る場所はあるのだろうか、という感覚が拭えずに復職をためらっているケースが多くあります。

そっとしておくことが回復につながる場合もあります。一方で、会社との関わりが途絶えたまま時間が経ち、そのまま退職へとつながってしまうケースもある。休職中に会社とのつながりをどう保つかは、回復の過程においても大きな意味を持ちます。

休職者支援で本当に大切なこと

休職者が出ると、企業はどうしても、周囲への負担や現場の大変さに目が向きがちです。でも、休職中の本人が一番気にしているのは、自分が職場に居場所があるかどうかということだったりします。

先ほどの企業が考えていたのは、どう対応するかではなく、どう迎え直すかでした。その姿勢の違いが、本人の気持ちを前向きに変えていったのです。

メンタル不調で休職する人には、真面目で責任感が強く、むしろ仕事ができるからこそ無理をしてしまうタイプが多い印象があります。そんな方が調子を崩したとき、会社がどう向き合うかは、その後の回復にも、職場への安心感にも、大きく関わってきます。

オンラインリワークは「戻っていい」と思える感覚を育てる場所

オンラインリワークは、休職中の回復をサポートする場です。生活リズムを整え、思考や行動のクセを見つめ直し、働き方を改めて考え、小さな成功体験を積み重ねていく。こうした取り組みを通じて、戻れる状態をつくるだけでなく、戻っても大丈夫だと思える感覚を育てていきます。

また、企業との関係性を保ち続けることも大切にしています。本人の状態を専門家が把握しながら、企業側には適切な関わり方を伝え、復職に向けたステップを一緒に整理していく。休職中の本人と企業、その間をつなぐ役割を担うことが、オンラインリワークの大切な仕事のひとつです。

会社が待っているという姿勢と、本人が戻りたいという気持ち。この両方が揃って、はじめて復職は現実的なものになります。もし今、戻っていいのかどうか不安を感じているなら、その気持ちをひとりで抱えずに、一緒に整理していきましょう。

この記事を書いた人

この記事を書いた人
辻本智美(公認心理師・作業療法士・精神保健福祉士)
精神科で20年以上勤務し、うつ病や適応障害などメンタル不調を抱える方の復職支援に携わってきました。
現在は、オンラインでのリワークプログラムやストレスケア講座を通じて、
「働く人が自分らしく回復し、安心して仕事に戻れる社会」を目指しています。

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