【双極症】「絶好調」が危ない?気分を安定させる暮らし方のヒント

目次

1.|双極症(双極性障害)とうつ病の違い、知っていますか?

2.|実は難しい?双極症の診断

3.|正確な診断をしてもらうためのヒント

4.|「ちょうどいい調子」を保つために

目次

双極症(双極性障害)とうつ病の違い、知っていますか?

うつ病は「落ち込み(うつ状態)」だけを経験する病気ですが、
双極症(双極性障害)は「うつ状態」と「気分が高まる躁状態(または軽躁状態)」を繰り返す病気です。

うつ病でも双極性障害でも、「うつ状態」のときは、どちらも気分が落ち込み、何もやる気が出なかったり、疲れやすくなったり、眠れなかったりといった共通した症状があらわれます。

たとえるなら、「見た目がそっくりな2つの風邪」があるようなもの。
どちらも熱やだるさがあるけれど、実は原因や治療法が違っている——そんなイメージです。

そのため、症状だけでは区別がつきにくく、医師でも見極めが難しいことがあります。

実は、双極性障害はそれほど珍しい病気ではなく、100人に1人ほどが経験すると言われています。
また、うつ病は生涯に一度経験する人の割合が、男性で10人に1人、女性では5人に1人とも。

実は難しい?双極性障害の診断

双極性障害と診断される診断が難しい理由のひとつに、「受診のタイミング」があります。

うつ状態で受診する人は多いのですが、躁状態のときは「絶好調で、やる気にあふれている」と感じていることが多く、本人が受診の必要性を感じにくいのです。
そのため、最初はうつ病と診断され、あとから双極性障害と分かることも少なくありません。

正確な診断をしてもらうためのヒント

診断の助けになるのが、「うつ状態の前に“絶好調”な時期があったかどうか」を振り返ること。

たとえば…

  • 睡眠が少なくても元気だった
  • どんどんアイデアが浮かんできた
  • 一気に活動を詰め込んで、途中で失速した
  • 普段より饒舌になり、人と話す機会が急に増えた

これらが当てはまる場合は、軽躁状態を経験していた可能性があります。
そのことを主治医に伝えることで、より正確な診断が得られることがあります。

「ちょうどいい調子」を保つために

双極症(双極性障害)のある方は、自分でも「今の気分がちょうどいい状態なのか、それとも躁状態に入りかけているのか」が分かりにくいことがあります。
特に、気分が高ぶっているときは、「元気が出てきた」「やる気がある」とポジティブに捉えがちなので、気分が高揚していることに気づきにくいのです。

でも、その「絶好調」に見える状態が、実は躁状態の始まりであることもあります。
知らず知らずのうちに睡眠時間が減っていたり、予定を詰め込みすぎていたり、人とのやり取りが増えて疲れていたり……。後になって「やりすぎていた」と気づくことも少なくありません。

また、躁状態の反動で、「うつ状態」に陥ることがあるので要注意です。

私がカウンセリングでお勧めしているのが、毎日の気分や生活の記録をつけることです。
その日の気分の程度や睡眠時間、どんな活動をしたか、どんな人と関わったかなどを簡単にでも記録することで、自分の気分の変化に気づきやすくなります

また、記録を見返すことで、

  • 「気分が高まるときは睡眠が減っているな」
  • 「気分が落ち込む前に無理して頑張っていたかも」
  • 「あの人と会うと気分が大きく揺れやすい」

といった自分なりのパターンや気分変動するきっかけにも気づくことができるようになります。

これらの気づきは、主治医やカウンセラーとの面談でもとても役立ちますし、再発や悪化を予防する上でも大切なヒントになります。

気分が安定している時期こそ、記録を続けることで「自分の調子のベースライン(標準)」を知ることができ、調子が崩れそうなサインにもいち早く気づけるようになります。

これは、うつ病や適応障害の方にも活用できる方法です。毎日コツコツと記録をつけて、気分の変化を可視化してみてくださいね。

安定したペースを守ることが再発予防のカギ


仕事や趣味が調子よく進んでいるとき、「今日は調子がいいから、もう少しやっておこう」「このまま一気に片づけてしまおう」と感じることは自然なことです。
特に双極性障害の方は、気分が上向いてくると活動意欲が高まり、「もっとできる」と感じやすくなります。

しかし、その「もうちょっと頑張りたい」と思った瞬間こそ、ペースを保つためにあえてセーブすることが大切です。
なぜなら、そのままやりすぎてしまうと、気づかないうちに睡眠や食事、休憩を後回しにしてしまい、心身が疲弊して反動的に落ち込みに転じることがあるからです。

“やれるからやる”のではなく、“明日も同じ調子で続けるために今日はここまで”という考え方を持つことで、気分の波を穏やかに保ちやすくなります。
調子がいいときほど、「いつも通り」を意識してブレーキをかける習慣を持つことが、安定した生活を守るカギになります。

気分の波を整えるために――心理療法という選択肢

双極性障害やうつ病でお悩みの方、または休職から復職を目指している方にとって、気分の変動を自分でうまくコントロールする力を身につけることは、職場復帰後の安定した生活を送るうえでとても重要です。
その一つの方法としておすすめなのが、認知行動療法(CBT)などの心理療法を取り入れることです。

認知行動療法では、まず気分や行動を日々記録し、気分がどのような出来事や考え方と結びついているかを整理していきます。
その中で、「自分はこういう状況のときに落ち込みやすい」「こう考えると気分が安定しやすい」といった自分なりの傾向やパターンを見つけていきます。

さらに、物事の受け取り方の“クセ”に気づき、必要に応じて考え方を修正したり、落ち込みそうなときにあえて気分が安定しやすい行動を選んだりするなど、実践的なスキルを身につけていくことができます。

こうしたスキルは、単に症状を和らげるだけでなく、再発予防や復職後の安定した生活リズムの維持にも大きく役立ちます。
「自分の気分は自分で整えられる」という自信を持てるようになることは、心の回復においてとても大きな支えになるはずです。

双極性障害の方にとって、「絶好調」な気分のときこそ注意が必要です。
やる気が出ても、“いつも通りのペース”を守ることを意識しましょう。

そして、気分の記録を習慣にし、変化に気づけるようにしましょう。
必要があれば、主治医の先生やカウンセラーと相談して、無理のない暮らし方を整えてくださいね。

この記事を書いた人

この記事を書いた人
辻本智美(公認心理師・作業療法士・精神保健福祉士)
精神科で20年以上勤務し、うつ病や適応障害などメンタル不調を抱える方の復職支援に携わってきました。
現在は、オンラインでのリワークプログラムやストレスケア講座を通じて、
「働く人が自分らしく回復し、安心して仕事に戻れる社会」を目指しています。

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